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2023.10.23

国際誌でRED-S(スポーツ選手の相対的エネルギー不足)に関する特集号を刊行

 教員の澁谷です。

 私たち大学の研究者には研究に関連する仕事が4つほどあります。それらは、1)研究活動を通じ発見した内容を論文として発表すること、2)研究活動において得られた知見を学生に伝えること(教育活動)、3)学術界への貢献、4)研究活動を広く一般社会に伝えること(社会貢献活動)です。特に、1)2)の活動については、学校教育法などの中にも大学教員の主たる業務の一つとして記載されており、私たち大学教員は、毎年、主体的に関わった論文(主著及び責任著者論文)を発表することが求められています。前回は、4)に関する活動を紹介しました。今回は3)に関する仕事の紹介です。

 学術界への貢献として代表的なものは査読という仕事です。これは、世界中の研究者がまとめた研究論文を審査する仕事です。私は、20234月以降、ここまでで30編ほどの審査を行ってきました。審査を断っているものを除いて、年間に50100件ほどの審査を行います。そして、この審査を行う査読者を選定し、その査読者からのコメントを通じて、最終的な採否を決定する仕事を行う人のことをEditorといいます。私は、複数の国際誌のEditorを務めています。このEditorという仕事も学術界への貢献活動の代表的な仕事の一つです。そのEditorの仕事をさらに拡張させたものが、今回紹介するSpecial Issuelaunch(立ち上げ)です。

 現在、私は、博士後期課程2年の宮本真菜さんとともに、スポーツ選手の栄養摂取量、心的ストレス、月経不順などの障害の発生についての研究を進めています。今回、その宮本さんとともに、国際誌上でスポーツ栄養学に関する特集号をlaunchすることが決まりました。その概要についてお伝えします。

 スポーツ選手においてはトレーニングに必要とされるエネルギー量を摂取し続けることが非常に難しく、その相対的なエネルギ摂取不足(RED-S)は社会的な問題となっています。現に、私が日本代表チームにスタッフとして長年関わっているローイング競技における世界トップレベルの男子選手においては、1日に8000kcalから12000kcalのエネルギー摂取が必要とされています。女子選手において8000kcal程度の摂取が必要とされています。これは、ほぼ一日中、何かを食べ続けなければ摂取できない量です。

 スポーツ選手におけるエネルギー摂取量不足は非常に深刻で、運動パフォーマンスを著しく低下させるだけでなく、骨折などによる運動機能障害、精神疾患、貧血をも発症するなど、様々な弊害を引き起こすことが明らかになっています。しかも、エネルギー摂取量が適正量より除脂肪体重1kgあたり10~15kcal低下した状態が4日間継続するだけでLH(黄体形成ホルモン)などの分泌が乱れることも知られています。これにより、女性であれば月経不順などの症状が発生する可能性があります。これらは宮本さんの研究テーマの一つです。このRED-Sを中心的テーマとした特集号の刊行については、他の国際誌からも再三に渡り、私のところに依頼が来ており、国内外の研究者とともに、その刊行について議論してきました。 今回、総合的に判断し私がAcademic Editorを務めるPeerJ Life & Environment誌上で、このRED-Sに関する特集号をlaunchすることといたしました。その特集号のなかでRED-Sへの理解、アスリートの栄養評価方法、アスリートにおけるエネルギーバランス、栄養摂取不足と鉄吸収、RED-Sによる心的側面への影響、ジュニアアスリートへの支援など10を超える項目において広く学術論文を募集します。それにより、スポーツ現場におけるRED-S(スポーツ選手の相対的エネルギー不足)解決へのヒントを与えるプラットフォームを提供することを、この特集号の目標としています。特集号の完成は2024年から2025年となるかと見込まれます。

>>PeerJ Life & Environment誌のホームページはこちらから
https://peerj.com/life-environment/

>>大学院修士課程健康栄養学分野及びスポーツ栄養学コースの詳細はこちらから
https://www.nuhw.ac.jp/grad/field/master/hn.html

>>大学院博士後期課程医療福祉学専攻の詳細はこちらから
https://www.nuhw.ac.jp/grad/field/doctor/major.html

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