先日、アイルランドで開かれた学会に参加してきました。
(学会内容は、またの機会にでもお話ししたいと思います。)
入国後、首都ダブリンから郊外への移動中、まず目に飛び込んできたのが、放牧された牛や羊たちがいる田園風景(写真1)。
小さい点に見えるのが羊たち。写真のような光景が至るところで見られました。ある先生が泊まっていたホテルでは、窓のすぐ下で、羊が放牧されていたそうです。
畜産と農業の伝統に裏付けられたアグリフードビジネスの国、アイルランド
調べてみると、アイルランドは畜産農業大国。
この国のイメージはグリーン。
この国の農業は、小規模な家族経営で5,000年以上、200世代にも亘り、代々受け継がれた伝統的な農法に、国(アイルランド政府食糧庁)が持続可能性を追求した、徹底的な介入を行うことによって、食の品質が保たれているそうです。
持続可能型の農業で、人にも環境(動物たちにも)にも優しい。この政府による品質管理の介入は、「オリジン・グリーン」と呼ばれているとのこと(*1)。
国が率先して農業を牽引する。これによって、農業の伝統がアグリフード産業と結びつき、進化を遂げたのがアイルランドという国で、アグリフードビジネスが発展し、農具が大きく改良されるとともに、食の安心・安全さに加えて、地球環境への配慮も世界最高水準だそう。
このため、郊外の目の前に広がっていた風景には、「牛や羊たちが、広い牧草地を自由に歩き回り、永年放牧が限りなく実現された、動物達に優しい生育環境」が含まれていたのでした。
背景を知ることで、私が見たのどかな風景が深みを得て、どこか心地よいものに思えてきます。
こうした持続可能型の畜産農業によって得られる成果として、アイルランドは、人口わずか500万人だそうですが、産生される食料品や飲料は、3,500万人(世界180ヶ国以上)に食品を供給でき、他の国の胃袋をつかんでいるかのようです。
もう一つ、国が牽引していることとして、我々には聞き馴染みがない、「農作業安全」と言う、農作業の仕事をする上での危険を未然に防ぐような取り組みがあるそうです。
そもそも農作業は、作業事故で命を落とす人が多く、これが万国共通の悩みとなっているそうで、建設業や工場労働者と比べても危険な職種だと言われているそうです。
しかし、日本では、農学部でもこれらのことを学ばずして社会に出るような状況。大学の授業で、農作業の安全性を学ぶ機会はないとのこと(*2)。
これに目をつけたアイルランドでは、世界的にも珍しい、農作業安全担当大臣が置かれているそうです。国の農業への本気さが伺えます。
ポテトチップス(アイルランドでは、クリスプスと呼ばれる)が気に入りました
アイルアンドのグリーンなイメージは、学会期間中にもよく目にすることができました。
例えば、アイルランドでは、ジャガイモが有名で、そして、主食の一つですが、私は、ポテトチップス(こちらでは、クリスプスと呼ばれる)をおやつで食べ、これが気に入りました。素材がよく、特に、Salt &Vinegarは酢がよく効いていました。
写真を見ると、安全性や環境への配慮がしっかりとなされているのが分かります(写真2)。また、シンプルに天然素材でできています。
面白いことに、アイルランドでは、パンにクリスプスを挟んで食べたりするそうで、私も朝飯でトライしてみました。パリパリの食感が面白かったです。
学会期間中の朝は、優雅にイングリッシュ・ブレックファーストとはいかず、これでこの国の文化に触れられた気分になれました。皆さんも、忙しい朝に日本のポテトチップスで試してはいかが…?
ちなみに、こちらの写真は、アイルランドでしか売られていない、Mr.TAYTO(ミスター・テイトー)のクリスプス。
日本では、若者の農業離れが叫ばれ久しいが・・・
皆さんがご存じの通り、日本の農業にも伝統やブランド力があります。しかし、アイルランドとの決定的な違いとして、伝統農業を現代に活かせていない現状があると思います。
日本では農業で生計を立てる見込みがなかなか立たず、農業へ就く人は少なくなるばかりです。
どの国もみな状況が同じな点は、農業は高齢化が進んでいること、また前述の通り、農作業では大きな危険も伴うことが挙げられます。
私は、若者にとって希望のある農業への姿を示すことは、ひいては、食全体の活性化につながり、食を支える当科の発展にもつながると考えます。
アイルランドの好事例には、私は見習えそうな点が多々あるように感じましたが、皆さんはどのように思うだろうか?
(参考)
*1 https://www.enterprise-ireland.or.jp/archives/94
*2 https://jfaco.jp/column/3043