2025.12.11
健康栄養学科の森です。
2025年4月に着任して早々、卒業研究を担当することになり、研究活動を行っています。
7月の投稿では、「食後の血糖変動は、運動パフォーマンスに影響するのか?」を卒業研究のテーマにしていると、お伝えしました。
その後、研究結果がまとまりましたので、進捗状況をご報告します。
もしかしたら、食後の血糖変動は、運動パフォーマンスに影響するかもしれません。
特に、朝食を食べないと、昼食後のパフォーマンスに何かしらの悪影響がみられるようです。
その悪影響とは何かというと、「睡魔」です。
皆さんは、昼食を食べた、2時間後に眠くなることはありませんか?その原因のひとつに、昼食後の血糖値の急上昇と急降下といった乱降下が関係しているかもしれません。
この、食後血糖値の乱降下を糖尿病学では、血糖変動幅と呼びます。
食後血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌され、血糖値が低下します。
この時の血糖変動幅が大きいと倦怠感や集中力の低下、眠気などの作用をきたす可能性があります。
そして、朝食を食べないと、昼食後の血糖値が上昇しやすいことが報告されております。
朝食を食べないと、食後の血糖上昇が異常に高くなり、インスリン分泌に伴う反動で、血糖値が低くなりすぎる可能性があります。
つまり、朝食を食べないと、昼食後の血糖変動幅が大きくなるため、眠気も強くなるのではないかという仮説を立てました。
次は、実験方法です。今回、我々は日常的にレジスタンストレーニング(筋トレ)を行っている競技選手(男性7名)に対して、下記の3つの実験を行いました。
実験1(コントロール):朝食を食べる⇒通常のスポーツ栄養向けの昼食を食べる
実験2(朝食欠食実験):朝食を食べない⇒通常のスポーツ栄養向けの昼食を食べる
実験3(低GI食実験):朝食を食べる⇒血糖値を上げにくい食材を組み合われた昼食を食べる。


血糖値は持続血糖モニタリングセンサーを装着してもらい、昼食完食後3時間までの血糖値の変動を分析しました。
今回使用しているセンサーは、血液中のグルコース濃度を測定しておらず、間質液中のグルコース濃度を測定しているだけなので、多少誤差はあります。
しかし、血糖値の経過を線でつなぎ、可視化することができるため、血糖変動の傾向を把握することができます。



結果です。
まずは、昼食摂取後の血糖値の変化を各実験条件間で比較しました。
その結果、朝食欠食は、低GI食と比べ、食後45分と60分時点の血糖値が、高い値を示しました。
次は、昼食完食後の血糖値の最高値と最小値の差を各実験条件間で比較しました。
その結果、朝食欠食は、コントロール及び低GI食と比べ、食後の血糖変動幅が高い値を示しました。
最後に昼食前と完食2時間後の眠気の尺度を各実験条件間で比較しました。
その結果、朝食欠食は、低GI値と比べ、眠気尺度の変化は、高い値を示しました。

この結果を考察してみます。
朝食を欠食した場合、他の実験条件と比較して昼食後の血糖変動幅が最も大きく、集中力が低下する強い眠気へと移行しました。
つまり、朝食欠食は昼食後の集中力の低下を招き、午後のトレーニングに影響を及ぼす可能性があります。本研究の結果から、日常的にトレーニングを行っている男性において、朝食の重要性が示されました。
やはり、トレーニングを行っている競技選手は、午後の練習でパフォーマンスをよくするためにも朝食を食べることは、重要ですね。
眠くて、ぼーっとしていると、トレーニングできませんよね。
一方、血糖値を上げない食材を組み合わせた、低GI実験では、朝食欠食と比較して昼食後の血糖変動幅は抑制されたものの、通常の昼食を食べたコントロールとの間で血糖変動幅と眠気尺度の変化に違いは認められませんでした。
朝食を食べていれば、わざわざ低GI食の食材を組み合わせた昼食を食べなくても良いかもしれません。
本年度の卒業研究では、朝食を食べないと、昼食後の血糖変動が大きくなるので、眠気が強くなることがわかりました。
朝食を食べることは、午後のトレーニングに良い効果を発揮してくれそうです。
ところで、皆さんは朝食を食べていますか?朝食を食べることの意味を卒業研究で明らかにしてみました。