こんにちは。生化学実験担当の田村です。
2年生の生化学実験では、羅臼昆布から「うま味成分」のグルタミン酸を抽出する実験を行いました。
グルタミン酸はアミノ酸の1つで、神経伝達物質でもありますが、なんといっても美味しい「味」のある稀有なアミノ酸です。
味の素(グルタミン酸ナトリウム)として、よく知られていますね。
この「うま味」というのは、いまでは世界共通語として知られていますが、日本人の池田菊苗によって発見されたものです。
塩味や甘味、酸味といったこれまでの味覚では言い表せない味覚「うま味」の発見でした。
さて、ちょっとお高い羅臼昆布50gから、どのくらいのグルタミン酸が回収できると思いますか?
お高いということは、それだけうま味成分のグルタミン酸が多く含まれているということですよ!
一晩浸漬した昆布の抽出液からグルタミン酸だけを抽出するため、まずは、陽イオン交換樹脂を使ってグルタミン酸を含む成分を吸着させ、それ以外は除去します。
写真の細長い管(カラム)に入っている茶色い粒子は、グルタミン酸が吸着した陽イオン交換樹脂です。
これにアンモニア溶液をカラムに注いで、吸着していたグルタミン酸を含む成分を樹脂から取り出します。
回収した溶液は、ロータリーエバポレーターで濃縮します。
この段階では、まだグルタミン酸以外のものが含まれています。
ここからさらに塩酸を加えて、グルタミン酸の性質である等電点(結晶化しやすいpH)pH3.2に溶液を調整し、グルタミン酸を結晶として析出させます。
結晶が現れたら濾過をして、乾燥させ、いよいよ味見です。
果たして、グルタミン酸はどのくらい回収できたのか…。
今回最も回収率の良かった班では、約0.2gのグルタミン酸が回収できました。
昆布50gから0.2gの回収量です。
苦労して得られたグルタミン酸のお味は、後からほのかに香る「うま味」といったところでしょうか。
少ししょっぱいとしたら、それは学生さんの汗でしょうかね。
なかなかタフな実験でした。(笑)
この実験は、実験が上手くいったかどうか、味覚でも確認できる珍しい生化学実験でした。
*グルタミン酸を抽出した後のコンブを持ち帰って、佃煮にした学生さんもいました。