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2022.07.01

味覚について

こんにちは。
健康栄養学科教授の遠藤和男です。

皆さんは「五味」をすべて言えるでしょうか?「五」は中国の陰陽五行説に基づきますが、中国の五味は甜、酸、咸、苦、辣であり、酸、苦はそのままであるし、甜は右のつくり、辣も偏や中華料理屋のラー油の漢字として見たことがあるでしょうね? 最後の咸の古字体は「鹹」で、塩辛いという意味です。おそらく新潟県人の多くは、”しょっぱい”と言いますが、私は関東人のほとんどが、塩辛いと言うより、単に「からい」と言うのを聞いて驚きました。外国人は辛いことを[hot]と表現しますが、確かに神経線維が刺激される結果、体温も上昇するのです。このような味覚については、3歳児までに習慣化すると言われます。食生活の影響が大きく、また住んでいる文化環境によっても左右されるし、上記のように表現さえも共通ではありません。

この辺は、入学後「解剖生理学」などで学びます。下図は舌と味覚の分布図です。

ヒトは血糖値が低下すれば意識朦朧となり、塩分が欠乏すれば、筋肉の収縮もままなりません。ところで「辛味」はどこ? と感じた人は偉い。「始めは辛くなかったが、だんだん辛くなって効いてきた」という人がほとんどであろう。これら味や感覚との役割については、まだまだ謎が多いのです。ただ酸味や苦味が奥に分布しているのは、何となく理解できるのではないでしょうか?

ところで、和食に特有の”旨味”の正体は何であり、どこで感じるのでしょうか? 皆さんはもちろん[味の素]を知っていますよね? 主成分はグルタミン酸です。カツオ出汁(だし)や昆布出汁の主成分です。ではどこで感じるかというと、苦みと同様に舌の奥の部分だと言われておりますので、本当においしい日本料理はジワジワと味わう。したがって、おふくろの味であった家庭料理が衰退し、さらに新型コロナの影響からか、美味しくてreasonableの値段の和食屋さんは、嘆かわしいことに「町中華」と同様、次々と店を畳んでいます。日本食はじっくり、ゆっくり味わう必要があるのです。

味の素などで味付けされた和食総菜が売っているではないか? という反論が寄せられそうです。かつて健康食のフェアに協力出店した老舗和食屋のオヤジさんが、味噌汁を試飲して直後、「馬鹿野郎、フェアだからと言って手を抜くんじゃねえ!」と、弟子をどなっていました。市販の人工調味料は味の素に限らず、すべて〇〇酸ナトリウムとして安定させる。わけを聞きますとオヤジさんは、保存のため加えられたナトリウムの嫌な塩味で、いわゆる「出汁」でないとすぐわかったそうです。

入学すればすべての皆さんが、かのオヤジさんのようになれるとは考えていません。ただし、味の世界はまだまだ奥が深いのです。十年後に私が和食屋に行ったら、周りは外国人だらけという”Cool Japan”の世界は、悲惨の限りでしかないですよね?

#その他